職人の娘。

琢磨と過ごした時間は、いつも楽しかった。


琢磨の赤茶色の髪の毛が、バイクのケツに乗っているあたしの頬に触れるたびに、胸が高鳴って。


あたしは、琢磨が好きだった。


でもきっと、琢磨はあたしを好きじゃない。


とんでもない悪事ばかり働いていたけれど、そんな所は純粋だった。


「ありがと琢磨、楽しかったね」


琢磨の家に着いたのは朝方の5時だった。


初夏だったから、空は明るくなってた。


「おう、俺も」


琢磨の大きな目が、あたしの目を見つめて微笑んだ。


「じゃあ、帰るわ」


そういって振り返った時、あたしは抱きしめられた。


琢磨に。


「ほまれ、付き合ってくんねえ?」


本当にさっき、そんな事を思っていたあたしに断る理由なんて無かった。


「うん…」


こうして、初めての彼氏が出来た。


中学校一年生、夏。


あたしの人生が変わりはじめた時だった。


どうしようもなく浮かれて、バイクを運転していても顔がにやけてくる。


全学年集めても、断トツのイケメンだなんて騒がれていた琢磨。


喧嘩も強くて友達思い。


文句なしの男は、あたしの彼氏です!!


そんな自慢を振り撒きたいあたしは、とことん浮かれていた。


家に着くと、じいちゃんが一人で新聞を読んでいた。


穏やかな人柄で、大声で怒った所も見たことなくて。


ばあちゃんとは13歳歳が離れているから、あたしが小学生になる辺りで定年して、今はあたしのもう一人のおじさん『翔梧おじさん』の会社で、部品を作ったりと細かい仕事をしてる。