職人の娘。

何を言ってるのかは聞こえない。


バイクに跨がったまま、中を見つめていた。


「じゃあお疲れ−!!」


ヤバい!!


瞬時に思った。


急いでバイクのエンジンをかける。


「あれ?ほまれ?」


ほらね、気付かれた。


あたしは走り去る。


名前を呼ぶ声は、聞こえなかった。






「お前!!びっくりしたあ…電話出ろよ」


琢磨は驚きながらドアを開けた。


悪事ばかり働く一派の、男衆の一人の家に向かった。


「ゴメン、忙しかった」

「ほまれって、忙しくなる事…あるの?」

「馬鹿にしてんのか」


ようやく、あたしは笑顔を作れた。


琢磨の家はたまり場で、走り回って疲れたらここにくる。


部屋の中には、野郎しかいなかった。


「葉子は?」

「あいつ帰ったよ、さっき。」


珍しい事もあるもんだ。


「何か血相変えて帰ったぞ」


血相変えて?


葉子に何か、そんなに大切な用事ってあるのかな


それが率直な意見だった。


葉子、気付いてたら…あたし葉子まで失わないで済んだのかな


一緒に、戦えたかな。


「あ−腹減った−」


琢磨の一言で、あたしたちは動き出す。


「やっちまえ」


俗に言う恐喝。


中坊に金は無くて、手当たり次第巻き上げる。


今思えば、捕まらないのが不思議だった。


無心だった。


この時はそれが楽しかったんだ。