職人の娘。

夜中、家族が寝静まってもあたしは眠れなかった。


何となくテレビを眺めて、意識を無にして。


たまに聞こえる単車の音や、酔っ払いの叫び声は、あたしの当たり前になっていた。


普段なら今頃、葉子と走り回っている時間。


なのに今日は、家にいる。


葉子を筆頭に、悪友たちが何度も電話したきたけど、あたしは携帯のディスプレイを光らせるだけで結局電話は取らず終いだ。


『自分の目的だけは、どんな手段を使ってでも成し遂げるよ。

あの人は、職人だから』


和則おじさんの言葉が耳について離れない。


柄でもなく、あたしは病んでいた。


不幸だって。


葉子にだって、そのほかの友達だって、心配してくれる親がいるのに。


あたしを心配してくれるのは親ではなくて祖父母だから。


この時、あの夜聞いた夢うつつの言葉を思い出す事ができれば、きっと何か違ってた。


思い出せないまま、あたしはバイクの鍵を引っつかんで外へ飛び出した。


走れば、きっと違う。


頭を冷やせばいい。


そんな事を思って、駅前の道をかっ飛ばした。


もっと違う道は無かったのか、無意識にあたしの足はお母さんの職場に向いていた。


『準備中』と看板のかかった店の中に、人影がちらつく。


声が聞こえる。


あの人の声だった。