職人の娘。

イライラ半分、悲しいのが半分。


部屋への階段をノコノコ登りながら、昼間に作った擦り傷を撫でた。


そう言えば、あのヘタレの名前を知らない。


ぼ−ッッと廊下を歩く。


あたしは、恵まれた家庭に生まれた訳じゃないんだ。


仲は悪いし、自分の娘の悪口を孫に叩きこむ祖母と、無関心な祖父。


母親はおれども、常にあの調子。


母親って言うよりも、むしろ父親。


そんな時、お母さんの部屋から何か聞こえた。


…声。


ドアに耳を当てて、息を潜める。




お母さんの泣き声だった。




必死に声を押し殺して、お母さんが泣いていた。


何年と、この部屋には入ってない。


あたしの知らない、お母さんの世界。


その中で、お母さんは一人、泣いていた。


「…。」


息を殺して、自分の部屋に入った。


心臓が痛い。


急に怒りが込み上げてきた。


お母さんは強くない。


強くないのに…





実質、この時


「女王・峰岸ほまれ」


が誕生したんだと、今になって思う。


負けない。


お母さんは、あたしが守る。