職人の娘。

「男だろう、さっさとしやがれな」


ぴしゃっとお母さんは言いきった。


「ちょっとあなた…」

「黙って聞いてな。甘やかすから自分の事もろくに言えねえガキになるんだ」


制止をかけた相手の母親を逆に制止して、お母さんは男子に視線を戻す。


「違う…」


蚊のなくような声が聞こえた。


「はっきり喋りな!!」


我が母は人様の家の玄関で…怒鳴った。


「違うよ、ほまれちゃんに殴られたんじゃない!!同じクラスの子にいじめられてるの!!その子にされたの!!」


一息で男子は言った。


「えっ…いじめ…」


息子に起きている非常事態に、母親は言葉を無くしている。


その様を見て、お母さんは微笑を浮かべていた。


「よく言えたね」


お母さんは男子に歩み寄って視線を合わせた。


「よし、明日はやり返せ。男だろ、お前は出来る。口喧嘩でもいい、やり返せ。」


そう言って、お母さんは私を連れて玄関を開けた。


あまりの驚きからか、母親は一切言葉を発さないで俯いていた。


「…土下座ぐらいでビビってんじゃねえ」


お母さんは私にそう言ったけど。


いやいや、嫌だろ。


どう考えても。