「――逃げて」 意識を失う彼を慌てて抱きとめる。肩を濡らす涙が冷たい。――どうして、そんな残酷なことを言うの。 傍を離れるというのならその手で壊して。全部全部、他の誰かに壊される前に粉々にして。 ねえ、「ごめん」なんていらないよ。椿君は何も悪くないよ、正しいのは椿君なんだよ。 だから謝らないで。私の想いを否定しないで。 ――この腕に眠る身体を抱きしめて、私もまた、その肩を濡らした。