バレンタインのキセキ。





竜があたしの目の前に来て、両手をあたしの背にあるフェンスを掴む。


カシャカシャ…とフェンスの擦れ合う音が響く。



りゅ、竜?


会って…間もない奴に?
何?



「一目惚れしたっつーか」


『え?』



ちゅっ













―――――――……



へ?あ?


な、何今…の…!!!



あたしの唇に柔らかいもの
が……!?



えっ!?


キ…ス?



『なん…で?』



「………」




『今のって…キス?』



『………』



無言なままの竜。



何で何も言わないのさっ!!!

こっちはいきなりキス
されたりしたのにさ!!!



あたしの今の頭の中は、
少しの怒りと疑問と悲しさで
埋められていた。





あたしの……


『あたしのファーストキスだったのにぃ!!』



あたしは少し涙声になりながら竜に言い放った。



ハッとして竜の表情を伺うと、どこか傷ついたような表情をしていた。




何でそんな表情すんの…?


『ご、ごめん…』


あたしはそれだけ言って、逃げるように教室へ戻った。