「ごめんね、壱」
壱なんて呼んでほしくなかった。
「あたしはあなたが大好きだった。あなたも、あたしを大好きだった。
けど・・・どこかであたしたちはすれ違ったの。
あたしはもう壱を好きじゃない。
・・あたしは壱と結婚できない」
七海は、頭を下げると、店から出て行った。
俺は何時間そこにいただろう・・・。
宏太先輩に声を掛けられるまで俺はロボットの様に体だけが固まっていた。
「壱吾」
「・・・」
「壱吾」
「・・・」
「おいっ!壱吾っ!」
「あ・・・先輩」
「壱吾、帰るぞ」
「・・・はい」
先輩に連れられ店を出た。
「先輩がなんでここに?」
「松下から電話があった」
「・・・」
「"壱吾を迎えに行ってくれ"ってな」
「・・・俺の母親かよ」
俺がそう呟くと先輩は眉毛を少し下げて笑った。
そして俺の頭を優しく撫でた。
「良く頑張ったな」

