『いい旅館ね〜』
『ほんと、すぐそこに海が見えるし眺めもいいね』
週末の土曜日――――
熱海の旅館で、あたしと圭のお母さんがそう言って外を眺めていた。
『そうか〜、まぁコストを考えるとなぁ…』
『データでは今年に入ってからは基準値がどんどん下がってるし』
そして、部屋の座椅子では、そう言いながらお父さん同士が仕事の話をしているようだった。
『なぁ静!』
『ん?』
『暇じゃね?どうせ今日は夜までどこも行かないみたいだし』
『そうなの?』
『え?さっきあいつら今日は温泉入ってゆっくりお酒飲も〜みたいなこと言ってたじゃん』
『……』
今日もかぁ…。



