通夜の夜は一晩中線香を絶やしてはいけないから、消えないようにちゃんと見てなくちゃいけないのよ――――。
おばあちゃんがそんなことを教えてくれたから。
あたしは線香が消えないように、ただずっと…
新しい線香を用意しながらそれを見つめていた。
ねぇ、お母さん。
一人になった会場で。
新しい線香を挿したあと、お母さんの遺影をそっと見上げた。
そして―――
立ち上がったあたしは……
お母さんが入れられていた柩のそばへと近付いていく。
通夜が始まる前、おばあちゃんに言われた。
お母さんの顔、ちゃんと見てあげなさい。
でもそう言われたけど……
怖くて見ることができなかった。
だけど…
あたしはゆっくりと、柩のそばまで歩いていくと、そこで眠っていたお母さんの顔を亡くなってから初めて見たんだ。
ずっと怖かった。
死というものに向き合うことが。
多分怖かったんだと思う。



