『貴……あいつ、お母さんは元気か?』
何も知らないお父さんは、何気なくあたしにそう聞いて。
あたしの答えをじっと待っていた。
『ねぇお父さん……』
『ん?』
『お父さんはさ、お母さんのこと、今でも好き?』
『なっ…何言い出すんだ急に』
突拍子もないことを聞かれたお父さんは少し驚いていたけど。
あたしが何も言わずに黙っていたら、ちゃんと答えてくれた。
『お父さんは今までもこれからも。ずっとお母さんのことが好きだよ』
ねぇお母さん?
お母さんはどうして……
こんなに愛してくれていたお父さんを…許せなかったの?
こんなに想ってくれる人…
もう一度、信じようとは思えなかったの?
『どうした静菜。何かあったのか?』
黙りこむあたしに、お父さんは優しくそう言葉をかけた。



