救急車に乗り込む前は、近所の人が何が起こったのかとぞろぞろ外へ出てきていて。
おばあちゃんは気まずそうな顔をしながら俯いていた。
そして初めて乗った救急車の中では、搬送先の病院とのやり取りや、お母さんの手当など、たくさんのことで慌ただしくて。
あっという間に病院へと着き、また慌ただしく院内へと運び込まれていった。
手術室の前で、立ち尽くしたままのおばあちゃん。
そしてすぐに、おじいちゃんも息を切らしながら現れた。
『今度はなんだ!一体何があったんだ!』
おじいちゃんは声を荒げておばあちゃんの体を揺すった。
『分からないのよ!私が戻ったら静菜が泣いてて…貴子はお風呂で手首を切ってて…』
おばあちゃんはそう言うと、我慢の糸が切れたように一気に泣いていた。
『静菜、何があったんだ?今日は何を言ったんだ』
おじいちゃんがあたしを見つめる。
『あたし……』
今日は何も話なんか……
『もうたくさんだよ。もう…たくさんだ』
おじいちゃんはそう言うと、黙って近くの椅子に腰をおろした。



