そう思って自分の部屋に向かおうとした時―――
お風呂からシャワーのような音が聞こえてきた。
なんだ。
お母さんいるんじゃん。
あんなことがあったけど…
ちゃんとただいまだけは言いたくて、浴室に繋がる洗面所の扉を開けた。
『ただい……』
でも、そう声を出した時、
浴室の磨りガラスの扉に写る、向こう側の妙な色に気付いた。
な……
なんで赤………
赤い色が見えるの?
『お母さんっ!』
あたしはすぐに異変に気付き、浴室の扉を開けた。
『おか………っ…』
全身に鳥肌のようなものが立ったあと、ブルブルと両手が震えていく。
『やっ…』
あたしが目にしたのは……
浴室の床に落ちていた一枚刃のまっすぐな剃刀と。
真っ赤な血が混ざったシャワーの水が排水口へと流れていく光景。
そして……――
浴室に座り込んだまま動かないお母さんの姿だった。