『神谷さん、前に出て来てくれる?』
ぼんやりと教室内を見渡していたあたしに、先生がそう声をかけてきた。
『あたしですか?』
そう確認すると、先生は優しくうんうんと二度頷いた。
なんだか一気に集まってくる視線。
そっか……
転校すること報告しなきゃならないんだよね。
やっぱり黙って転校…なんてできないんだ。
重い腰をゆっくりと上げて、あたしは前へと歩いていく。
そして、俯いたまま立っていると、先生がみんなに向かって言ったんだ。
『今日で神谷さんは…このクラスのみんなとお別れすることになりました。春からは○○小学校という学校に転校します』
なんだかシーンと静まり返った教室。
えー?とか。
ザワザワしたりとか。
突然だからもっと驚くかと思っていたけど。
そんなあたしの予想とは正反対に、静かな空気が流れていく。



