『とにかく早くサインをしてちょうだい』
『それはできない。だって静菜はどうするんだ?俺達の子供なんだぞ!』
やっと…あたしのこと思い出したの?
『静菜は私が育てていきます。親権も私が持ってここで暮らすつもりよ』
『何言ってるんだよ!』
そうよ、何言ってるの?
ここで暮らす?
私が育てていく?
親権って何なの?
『もう本当に無理なの。離れて一ヶ月、毎日ずっと考えた。静菜のためにもやり直さなきゃって…でもやっぱり許せないの』
『貴子…頼むよ』
『ごめんなさい。本当に無理なの』
静まり返るリビングは、とても冷たい空気が流れていた。
仲のよかった家族の形は…
もうそこにはなかったんだ。



