『でも体の関係があったわけじゃない。ちょっと酔ってて魔がさしただけなんだ…本当にすまない…』


『魔がさした?すまない?それで私がはい、分かりましたって許せると思ってるの?』


『いや、思ってない。でも信じてもらえるように許してもらえるように精一杯償うつもりだ』


『信じられるわけないじゃない!ずっと近所付き合いしてきた仲のよかった人と……奈美ちゃんも奈美ちゃんよ……ぅ……あなた達が私を裏切ったことは一生ずっと消えないんだから』





涙を流すお母さんを見ていると、あたしの瞳にもどんどん涙が溢れていった。




何が悲しかったのかはよく分からない。




でも、あの日あの時起きていた出来事を頭が理解していくにつれ、歪んだ大人達に振り回されていた自分の状況が、とてもくだらなく思えた。





この人達はあたしよりも自分達の気持ちの方が優先で。



つまらない欲に走ったお父さんと。


それを許せずにいるお母さん。




そんな二人は、子供であるあたしの気持ちなんて二の次で。



今ここにあたしがいることすら忘れているんじゃないかと思うほど、あたしのことを空気のように扱っているように感じた。