でもそんな日々もまた…
終わりを迎えることになるなんて、あたしはまだ何も知らずにいた。
ある日曜日の昼下がり。
おじいちゃんの家に、あの日以来お父さんが初めて訪れた。
そして、あたしを見た瞬間、お父さんはすごく嬉しそうに駆け寄ってくると、なんだか力いっぱい抱きしめられた。
五年生にもなってお父さんに抱きしめられるなんてなんだか恥ずかしかったけど。
でも何故かこの時は…
すごく嬉しかった。
お父さん、やっとあたし達を迎えに来てくれたんだ。
やっと家に帰れるんだね。
お父さんの大きな腕に包まれたあたしは、なんだかやっと、ホッとしていたように思う。
だけど…
『そんな汚い腕で静菜を触らないで!』
お母さんのそんな大きな声が、突然部屋中に響いたんだ。