本当にやばそうだな…

何も見えなくなってきた。




とりあえずゴーグルに張り付いた雪を除去するために一旦立ち止まってみると、なんだかふと…あたしは一瞬ですごい恐怖に襲われていった。





だってゴーグルを外しても…


前が見えなくて。


目を開けていられないくらい雪が踊るように吹き荒れていた。




ビュービューという強い風も、おさまる気配は全くなくて。


あたしは進むべき方向さえも分からなくなっていった。





右を見た。

左も見た。



後ろも振り返った。






なのに…



360度、全てを見渡しても…



誰もいなくて。

風の音しか聞こえなくて。


ただの真っ白な色しか分からないくらい何も見えなくて。




『圭!』




あたしは思わず、久しぶりに圭の名前を呼んでいた。



でも声は全然返ってくる気配もないまま不安な気持ちだけがいっぱいになっていく。