『なんか風強くなってね?』
『だね。雪もすごくなってる気がする』
何度か滑り続けていた時、ふとリフトに乗る前にあたし達は天候の変化を肌で感じとっていた。
もうすぐ6時。
気付けばもう、辺りは暗くなっていた。
夢中で滑っていたせいか、時間はあっという間に過ぎていたんだ。
『もうやめておいた方がいいんじゃないかな』
リフトの乗車口にいた係員のおじさんが、乗ろうか迷っていたあたし達にそう声をかけてくれた。
確かに吹雪みたいに強い風になってきてるし、雪山の天候は一気に悪化したりするんだよね。
『じゃあ今日はもうやめとくか』
『いっ…あと一回だけ。最後に滑ろうよ!お願い!』
なのに。
もう少しだけ一緒にいたい。
そんな思いを我慢することができなくて、あたしは圭にそう言ってお願いしてしまった。