『お前こっちだから』
『えっ?』
そして家から出たあたしに、圭は大倉家の車からそう言って手招きしてきた。
『二台で行くから子供はこっちなんだって。慎のおばさん達が神谷んちの車に乗るみたいだから』
『そっか』
あたしの家の車に、あたしの親と慎の親が乗ることを伝えてきた圭は、あたしのことを相変わらず“神谷”って呼んできていた。
あたしも大倉って呼ぶようになってからは、ずっと圭って呼ぶことができなくて。
きっと、何かのきっかけがない限り、もうあたし達が名前で呼び合うことはないんだろうなぁ…なんて。
走り出す車の中でぼんやりと考えていた。



