GODDESS

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「…お姉さん?」


再度彼に呼ばれ、あたしはハッと我に返る。


「だっ大丈夫ですっ!ありがとう。」


何やってるの、あたし。


にっこりと笑いお礼を言うと、慌ててかばんを拾った。

そして、じゃ、と軽く別れの挨拶をして離れるはずだった。


「危ないから送る。」


が、ギュッと掴まれた右手。


冷たい


それは素手に握られて一番に感じたことだった。

もともと冷えている自分の手がそう感じるんだからそうとうだ。

さっきは洋服越しに掴まれたからわからなかったけれど…


あたしは顔をあげた。
しっかりと彼を見たかったから…


「いつから外にいたの?風邪ひいちゃうよっ!」


雪で髪や服がこんなに濡れるまで、どれくらいかかるのだろう。

空を見上げるとチラチラと雪がおちてくる。


彼の両手をとって、強く握った。

擦り傷がチクリチクリと痛んだ。

けれど、今は彼をあたためることが優先だと思った。


「あたしの家、近いの。」


目を真ん丸にしてる彼の手を引っ張って、あたしは走り出していた。

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