GODDESS

.

その一言に大きく目を見開いたのは、他でもない、

あたしだった。


「え?」


今、なんて?


夢から醒めた心地がした。
と、同時に心臓がけたたましく拍動を刻みはじめる。


自分が思っていたことが彼に伝わったのか…、それとも…


「嘘、慰めてなんて冗談。」


そう言って彼はあたしの腕を掴むと、軽々と立ちあがらせた。

顔がグッと近くなって、視線が至近距離で交わる。


綺麗な瞳…


彼の瞳に吸い込まれそうな感覚をおぼえて、


「血、出てる…」


そう言ってあたしの腕を掴んだ彼にドクン、と心臓が悲鳴をあげた。


「やっ…」


唇からもれた、情けない声音。

肘から伝わる冷たい何かに頭が支配される。

そう彼があたしの腕をとらえて、その形の整った唇で肘にできたすり傷にキスをおとしたのだ。

あたしは、思わぬ彼の行動に腕をひいた。

けれど、彼はそんなあたしに向かって上目遣いでニヤリと笑っただけで、腕を離そうとはしない。


「可愛いね、お姉さん」


そう耳元でしっとりと囁かれ、あたしは不覚にもよろめいてしまう。

バクバクと強い拍動を刻む心臓。


「だいぶ、飲んでる?家、近く?」


顔が熱いのはお酒のせいかどうかは定かではない。

けれど、この心臓は確かに、彼の言葉に反応していた。

.