GODDESS

.

グッと涙を堪えて車に乗った。

車が進み出して、どんどんあーくんと離れていく…


もう一度、もう一度だけ…


『あーくん、元気でね!』


窓を開けて、そう叫んでいた。


『ちえりーっ!けっこんっ…やくそくっ!』

『約束っ!』


途切れ途切れに聞こえるあーくんの声に必死に答えて、
あたしたちは別れた。

…たぶん、約束とはそのことを言っているのだろう。


「ちーちゃん?」

「あっ…もう、あーくんっ!」


昔の記憶にトリップしていると、あーくんが首筋にキスを落とすという、ちょっかいを出してきた。


「今、考えてるんだから…」

「ねぇ、ちーちゃん。“葵”って呼んで?」


何をいきなり…


戸惑いながらも口を開く。


「…あ、葵?…っ」


あたしの呼びかけに返って来たのは、首筋にちくり、と走った小さな痛み。

あたしは真っ赤に染まった頬を隠そうと右側に感じる彼の気配から避けるように顔を背けた。


名前を呼ぶのって意外と恥ずかしい…


「耳、赤いよ。ちえり…」


そう耳元で囁いたあーくん。
続けて、ペロッと耳裏を舐められ、身体のほてりが増した。


ヤバいっ
のぼせちゃうっ


「身体、熱い…のぼせそ?」

.