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あっぶない、危ないっ!


あたしは慌てて道をそれ始めた思考を正すため、頭を振った。


せっかくの良い気分が台なしじゃない。
これじゃ、なんのために飲んでるんだか…

それよりも、早く帰って寝ーましょ!


あたしの家は、この居酒屋から徒歩5分のところにあるマンションの2階だ。

だから、ベロンベロンになっても他人の世話は要らないし、安心して飲める。


本当、良いところに住んだわ。
まあ、酒が基準ってところがイタいけどね。


「ぬわっ!」


なんてことを考えてたら、視界が揺らいだ。

目の前が真っ暗になって掌と膝に痛みが走る。


「痛っ!」


瞬時に自分が転んだのだと悟った。

寒さで足も冷えていたせいか、あまりの痛みに涙が浮かぶ。

少なくも多くもないこの人通りの中、あたしは恥ずかしいやら、痛いやらですっかり酔いも醒めて…


「サイアク…」


立ち上がる気力もなく座り込んでしまった。


寂しい…
みんな、離れていっちゃった…


時折、肌を切り裂くような鋭い風があたしを煽る。

雪が髪について、水に変わり、肌に張り付く。

そんな纏わりはいらないのに…


「…大丈夫ですか?」

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