「…なかなか言わないから。
またなかったコトにされるんかと思った」



“ハァー”と安堵したようなため息が頭の上で聞こえた。



『…なかなか言わない…?』



何のコトだろ。

私、郁に何か言ったかな?



すると郁は。

私の耳に唇が触れてしまうんじゃないかってくらい。

唇を寄せて囁いた。




「…茜が俺とキスした理由」





郁は骨っぽい指で私の髪を撫でた。



『はッ?!』



キスした理由?!

私、何にも言ってないよ?!



「…触れるだけのキスに物足りなさも感じたし。
もっと触れたいって思った…って」



ギャーッ!!

あれ、声に出てたのッ?!



焦りと恥ずかしさで体は熱くなるし。

背中は冷や汗が伝う。



も〜、恥ずかしくて。

顔が見れない…。