『ち、ちょッ?!郁?!』
抱き寄せられただけだと思っていたのに。
背中と腰に郁の腕がガッチリまわっていて。
体を捩ってもびくともしない。
『離してよッ!!』
「…あんな顔した茜が悪い」
そう言いながら。
私の体にまわした腕にまた力を込める郁。
……バクバクバクバク……
私の心臓は今にも胸を突き破ってしまいそうなくらい。
これだけくっついてる郁に聞こえてしまっているんじゃないかってくらい。
激しく鼓動を打っていた。
…私1人でこんなに動揺してバカみたいだよ。
郁はいつだって慣れてる。
いつだって郁のペースに巻き込まれてる。
私1人で焦ってドキドキして。
郁はそんな私を見て楽しんでるんだ。
“あの日”のことだってそう。
バラされないかってヒヤヒヤしてる私を見て。
心の中で笑ってたんだ。
そう思ったら。
今までのコトがウソのように。
“スッ”と体の熱が引いた。

