ホントに。
ホントに一瞬の出来事だった。
「…甘…」
一瞬。
唇に“何か”が触れた。
瞬きをしている間に。
“それ”は離れていた。
…我に返ったトキには。
郁は何秒か前と同じ距離を保っていて。
左手の親指で、自分の唇をなぞっていた。
『…郁、今…』
……今、何が起こったの……?
……私、何されたの……?
思考回路がマヒしてるみたい。
頭がうまくまわらない。
そんな私はマヌケ面だったのか。
郁が“フッ”と小さく笑った。
「…キスはしてねぇよ?ちょっと舐めたケド」
…なッ、なッ、なッ、舐めたッ?!
郁の言葉に反応するかのように。
心拍数急上昇。
顔も体も急に熱くなる。
どうしよう?!
どんな顔すればいいの?!

