「7月26日」
『へ?』
「7月26日、俺にちょうだい」
気付いたら郁との距離がさっきより近くなっていた。
『…7月26日…?』
「そ。7月26日」
郁が私の髪を少し取って。
唇を寄せる。
その仕草に胸がキュウキュウする。
…心臓が、うるさい…。
…カラダが、熱い…。
「…そんな顔して、誘ってんの?」
フッ。
唇の右端を持ち上げて目を細める。
『さッ、誘ってないッ!!』
やだ…。
そんな顔してたのかな…。
なんだか妙に恥ずかしくなって。
俯いた。
チュッ。
『なッ?!』
頬に柔らかい感触が当たった。
「…隙あり」
私の顔の真横には。
ベェッといたずらっ子のように笑う郁の顔。
「26日楽しみにしてるから」
そう耳元で囁いた。