「橋本」

「あんたのせいで、あんたのせいで」

転がったビニール傘を、蹴り飛ばした。

ビニール傘は煩わしい音を立てて、道の端に滑っていく。

リュウは、なにも言わない。

ただ、情けをかけるかのようなまなざしで、わたしを見つめている。

そうだ、リュウのせいだ。

だって、あの人を、もう心から切り離せないあの人をわたしの見えるところに置いたのは、ほかの誰でもない、彼なのだから。