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「…」


ゆっくりと起き上がるあたしの目の前にはマグカップを持った由貴がいた。


「もも」


寒いでしょ、と言いながら暖かいココアを差し出してくる。


冷えた体に、心に、ココアが染み渡る。


「…おいしい」


「よかった」


そう言って、隣に座った由貴にベッドが軋む。


「大丈夫?もも」


「え?何が?」


首を傾げると、由貴はケータイを指す。


「ずっと、ケータイ鳴ってた」


今ならまだ間に合うんじゃない?って言うんだ。


でも、もう戻れない。


あたしは、大切な人を裏切ったから。


「何言ってるの…あたしが好きなのは由貴でしょ」


ふふ、と笑って見せる。

でも、由貴は真剣な顔のまま。


「俺なら、ももを笑わせてあげれるって思ってた」


「えー?あたし笑ってるよ?」


ほら、って笑ってみせるのに由貴は首を横に振る。


「泣きそうな顔で笑ってる」


そんな顔見たくないからさ、って頭を撫でられた。