「マコ聞いて!!大ニュース!!」

ガラッと音をたてて教室のドアを開け、黒いさらさらのロングヘアの美少女が、あたし中村真琴の元へと走ってくる。

「あ、シオおはよ~」

あたしは息をきらせた西田詩織を、持っていた下敷きでパタパタあおいだ。

「どうしたの?」

「昨日うちのおばあちゃんがね、ヒーローに会ったって!!」

「あらまぁ」

「ちょっと!反応薄いし!」

「えー?そうかなぁ?」

あたしの反応に満足がいかないシオは、腰に手をあてて口を尖らせる。


ここ半年くらい前から、突然この町にヒーローが現れた。

老人の重い荷物を運んであげたり、道に迷った人を案内したり。

些細なことだけど、困っている人々を助けるその人を、いつの間にやらみんな"ヒーロー"と呼ぶようになっていた。

「ヒーローさんに会ったなんて、そんなに珍しいことじゃないもんー」

そう言いながら、あたしはまだ会ったことはないんだけど。

すると突然シオの大きな黒い瞳がキラリと光った。

「それがね、マコ!彼ってば超イケメンらしいのよっ!!」

ミーハーな彼女の語尾に、ハートマークがついた。