「でも、愛華チャンが俺……!」

昇太郎クンは一歩進む。
また私は一歩後ずさる。

「えッ……でも私はッ」

いつの間にか私は旧体育館の壁に追い込まれていた。
しかも私の両サイドが昇太郎クンのがっしりした手で閉じ込められて。
身動き取れないじゃん!

キッとした顔で昇太郎クンを見る。

「!」

さっきの照れていた顔はどこにもない、
恨みのこもった怖い目つきで見つめられていた。

まさに蛇ににらまれた蛙って奴。

今度は全身が震えだす。

「ねぇ、付き合ってくれないの……?」

かなり低いトーンでしゃべる彼。

「だってッ……私好きな子いるんだもんッ!無理だよ!」

少し強めにいうと、

「いいじゃねぇかッ……!」

私の両手首を片手でつかみ、頭上の壁に押し付ける。

「や……だッ」

私は顔をそむけるがもう片方の手で顎をもち顔を前に向ける。

やだ!
怖い……
助けて……!

「おい!!何やってんだよ!!?」

その声、そう和哉……!
彼の声を聞いた瞬間、ホッとしたのか涙腺がゆるんで涙がボワっと溢れ出た。

「か……ずやぁ……」

和哉は昇太郎クンに飛び蹴りをかます。
昇太郎クンはその場に倒れこむ。

「愛華!」

泣いている私の手をとり、走って校庭に引き返す。
助かった……
ありがとぅ和哉ァ……


校庭についたら私のことを気遣ってか歩いてくれた。

「大丈夫だった?何もされてないか?」

泣いている私のひどい顔に
和哉が自分の制服の袖で私の涙を拭いてくれた。

「うん……ありがとぉ」

和哉……大好き。
私はひざに擦り傷をおった程度だったから保健室で手当てをしてもらった。