阿修羅は立ち上がると、手際良くコンビニの袋から出した粉ミルクの缶を開け、赤ん坊に与えるミルクを作り始めた。

それを、回る視界の中見つめる弥勒。


阿修羅の器用さには、関心するばかりだ…。




【さ、飲みなさい。】
「あぁーっ!」
【何です、熱いんですか?】


腹を空かせているはずの赤ん坊が、ミルクを飲まないのを見て即座に哺乳瓶を冷まし始めた。

そして、人肌程度になった所で与えてみると…。



「んく。」
『飲んだな。』
【ええ、ちょっとドキッとしましたが。】
『阿修羅。』
【はい?】



阿修羅が振り返ると、ポンポンと頭を撫でる手の感触。
それは、紛れも無く弥勒の手で不覚にも涙しそうになってしまう。

大袈裟と思うかもしれないが、弥勒に仕えて千百余年。1度たりとも、こんな風に労いを受けた事はなかったのだ。

実力者であり、幼い頃からその片鱗を見せていた弥勒は、人に何かをしてもらう事はある意味自然な事だったのだろう。