と、こんなやり取りがあって弥勒は今この下界にいると言うわけだ。
偵察を命じられたにしては、何を見るでもなくぼーっと歩くだけの弥勒。と、ちらちらと降る雪の間から何か茶色いものが置いてあるのが見えた。


『……なんだ、アレは。』


見れば段ボールから少しはみ出しているのは、小さなもみじ。血色は悪くなっているが、微かに動いているのが見て取れた。
近付いてみると、それはまだ生きているようで微かに胸が上下しているのが見えた。そして、段ボールを覗くと赤ん坊が1人寒さに震えていた。


『棄てられたか、人間は愚かだ。我が子に情もかけられないか…。』
「ぅ…。」
『看取ってやる、見つけたのは私なのだから。』
「あ、ぅ。」
『……!?』


赤ん坊に向かって手を伸ばしかけた時、人差し指にヒヤッとした感覚。
一瞬遅れて、弥勒は赤ん坊が自分の指を掴んでいる事に気がついた。しかも、息絶えるのも時間の問題かに見えていたその存在は、自分を生かしてくれるかもしれない弥勒の指をガッチリ握って離さない。