と、弥勒が不満そうに漏らした時。肩にズシッとのし掛かって来た重み。只でさえ機嫌の悪い時にこんなことをするバカが悪いと、持っていた扇を勢いよく後方へと放った。

ぎゃっ!とみっともない声が上がりくるりと振り向くと和服姿の小柄な少女が藤色の髪の男を盾にしているのが見えた。

盾にされた男は、額から僅かに滲んだ血に目を回している。
だが、そんな事はお構いなしで少女は弥勒に向かって深々とお辞儀をした。


〈お久し振りです、弥勒殿。〉
『阿弥(アミ)…か、そのバカな男を放り出せ。』
《ひどぉーい!!アタシを除け者にするのね?弥勒ちゃんのバカー!》


このうるさく叫んでいるバカは、愛染と言って立派な神なのだがいかんせん身なりが個性的すぎた。
藤色の髪は後ろで高く結われ、背中へと流れていて一枚布で出来た服をゆったりとまとっている。

ここまでは普通、なのだが…。