坂道を上っていく香椎くんに連れられて、同じようにゆっくりと歩く。
長い長い坂道。
長い長い沈黙。
香椎くんは息一つ切れることもなく、ただゆっくりと歩いていく。
その足元を見る。
長い影が伸びる。
振り返ったそこに私の影も伸びる。
仲良く並んだ影と影。
どっちが主人でどっちが執事?
ううん。
影の私たちは執事でも主人でもなくて……ただの恋人に見える。
「綾渡セリさんは」
長い長い坂道の途中。
不意に香椎くんはそう切り出した。
「いつもいつも完璧を目指していた」
真っすぐ前を向いたまま。
私の方を見ないまま。
「学校を抜けだすなんて以ての外で」
一体何が言いたいの?
何を聞かせたいの?
「いつも前だけを向いていた」
私の心の声、聞こえちゃってる?


