愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~


黙ったまま香椎くんが歩くから。
私も黙ったまま付いていく。

握った手は本当にやんわりと包むだけだから。
振り払おうと思えば払えるんだ。

なのにできない。
したくない。

おかしいけど、私。
香椎くんとこうしていると落ち着くんだ。

もちろん、ドキドキはしてる。

だけどそれは最初のうちだけで、ずっとこうして握られてるとすごく心地よくて。

温かくて。

誰よりも傍にいたい……なんてことをどこかでぼんやり思っちゃってる。

まだ何も知らない。

正体不明で。
危険極まりなくて。

なのにこの人がいいなんて矛盾してるのもいいとこなんだけど。

でもきっと私。

『この人』がいいんだって。

そう思うの。


ふと隣の香椎くんを見る。

ゆっくりとした歩調。
ただのんびりと歩く香椎くんの顔。

それは本当に穏やかで、優しくて。

瞬間、胸がきゅんっと音を立てた。


そして呟きそうになる。


『スキ』


そんな一言を……