香椎くんはずんずん私を引っ張って病院の敷地内を出ていく。
そりゃそうよね。
まだ学校の授業残ってるもんね。
だけど……なぜか彼は学校の方向へは戻らない。
なんで?
荷物とかぜーんぶまだ学校にあるじゃんかっ!!
「ねぇ……」
「大丈夫」
えっと……なにが大丈夫なんだか教えてほしいです。
「とって食べたりはしないよ」
なんていうのか、ちょっとフレンドリーすぎやしませんか?
いや、それより『とって食べる』って何!?
私『スイーツ』じゃないって!!
「もう少し付き合って」
手首を握っていた彼の手がスルッと滑り落ちて……
私の手をやんわりと握った。
大きな手。
温かくて。
滑らかで。
男の人の手。
「ね?」
見上げた香椎くんの顔に『イジワル』の『イ』の字も見えなくて……
握った手から伝わる彼の温度に、私の心はじわじわ侵食されて行く。


