思い起こしてみる。
ま、出会いから崩れてるわよ。
弁当落とすし、そのあと変な返事した気がするし。
香椎くんと一緒に過ごすようになってから、どうも調子が狂っているような気がしてならない。
いや、崩されている?
狂わされている?
どちらにしても、香椎くんが全ての元凶であることはもはや否めない事実だ。
「セリ様と仲良くなるためにはどうしても……なのですよね?」
彼女、春野さんがちらっと香椎くんを見る。
香椎くんは勝ち誇ったとでも言うような顔で彼女を見つめている。
っていうか……この二人の間に私の踏み込めない領域が広がっているように感じる。
知っている者同士が知らない素振りをしているみたいな……なんだかちょっと胡散臭ささえ感じずにはいられない。
「分かりました。
それで結構です」
彼女はしぶしぶというかんじで、長い睫毛に覆われた瞼を閉じて見せた。
なにかとても不満げに見てとれるんだけどもね。
「では今後は私のことは『香純』とお呼びください、セリ様。
でも……執事様のほうは……なんとお呼びしたらよろしいでしょうか?」
おずおずと私に尋ねる香純ちゃん。
そうだなー。
香椎くんは……香椎くんって呼んだらoutなんだろうか?
「香椎くんはダメですよ、お嬢様」
あ、見破られてるね。


