「じゃ、そういうわけでよろしくお願いします」
そう言って香椎くんは彼女の病室の扉を開け、私に『中へどうぞ~』なんてかんじで手を部屋の方へと向けた。
やられたなって思う。
本当にまんまとしてやられたなって思う。
『ご褒美』なーんていう名のキスにまんまとしてやられちゃったんだな、私とか思う。
悔しい。
悔しい。
ほんと言うとものっそい悔しい。
だけど香椎くんだから許しちゃうんだな、まぢで。
病室で待つ彼女は不安げな面持ちで私たちを待っていた。
私は彼女のベッドの脇の椅子に腰を下ろすと、小さく深呼吸して彼女の瞳を見つめた。
「お友達にはなりたいって思ってます。
なのでついでに私の執事もお友達ってことでいかがでしょ?」
一瞬、彼女の眉間にしわが寄った。
そりゃそうだ。
執事もついでにお友達なんて考えられないもんね。
ま、それでだめならそれまでって思いたいんだけど。
私の本性見抜かれてるっぽいから、彼女をそのまま放置ってわけにもいかないのが辛いところ。
っていうか、なんで彼女にはわかったんだ?
完璧……崩れてたっけ?


