「では自己紹介していただいたらいかがでしょうか、お嬢様?」
私の不審顔を見てとったらしい香椎くんは、ニッコリ笑顔を崩さずにそう勧めた。
確かにと思う。
私、彼女のこと名前も何も知らないもの。
とりあえず怪我してたし、怪我した彼女の応急処置を香椎くんがしていたし。
現場取り仕切ってたのも香椎くんだったし。
その勢いで私ごと救急車に乗せられて、病院までの搬送に付き合わされたわけだし。
「お名前伺ってもよろしいかしら?」
そう聞く私に彼女はにっこりとほほ笑んで
「春野香純(はるのかすみ)と申します、セリ様」
小さくお辞儀をしてみせた。
彼女の雰囲気まんまの名前じゃんとツッコミそうになる私を抑えつけ
「まぁ、なんともかわいらしいあなたにぴったりですこと」
と返して見せた。
すると彼女はまたクスッとほほ笑み
「もうそんな猫を私の前でおかぶりになる必要ありませんから」
と言ったのだ。
って……なにこの展開?


