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「すみません」
彼女が目覚めて最初に告げた言葉はそれだった。
学園から目と鼻の先の総合病院の一室には今、私と香椎くん、それから怪我をして搬送された彼女の三人だけだった。
「私の不注意で、セリ様にこのようなご迷惑を」
そう言って彼女は大きな瞳を潤ませた。
いやいやいやいや……別に迷惑っていうか。
「本当ですね。
このようなことに首を突っ込むのは今後は控えたいと思います」
私の代わりにものすごーく嫌な言葉を返したのは言うまでもなく、香椎くん。
おいっ、こらっ、香椎!!
おまえ、怪我して辛いっていうのにそんな言葉かけてんじゃないってば!!
キッと睨みつける私に、けれど香椎くんは憮然とした表情を返すだけ。
なんつーか、執事らしくないよね。
平気で主人に楯突くっていうのかね。
「私は気にしてないですから、怪我を直すことだけお考えなさい」
そういう私に、彼女は本当に嬉しそうな顔を向けて小さく頷いた。
カワイイ。
本当にお人形さんみたいだなって思う。
ふと痛い視線を感じて振り返る。
おっそろいほど眉間にしわを寄せた苦い顔の香椎くんが、私たちを睨みつけていた。
なんだっつーのよ。
あからさまに『気に入らん』ってオーラ醸し出すなよ。


