「なに!?」
私が立ちあがるのを制するように香椎くんは教室を飛び出していった。
いや、無理だって!!
私も気になるもん!!
香椎くんの後を追って私は廊下に飛び出した。
悲鳴が聞こえたのは階段の方だった。
香椎くんの背中が廊下の向こう、階段の方へと消えていくのを確認しながら追う。
教室からはぞろぞろと悲鳴につられる様に生徒たちが出てきていた。
その間を縫うように階段へと向かい、私は香椎くんの姿を探した。
そして階下で彼を見つけ、私は目を覆いたくなった。
屈んだ彼の膝もとに小さな赤い液体が広がって見える。
「か……しいくん……?」
ゆっくり近づいてみると、香椎くんは女生徒の後頭部をハンカチで押さえるように抱えていた。
その女生徒の顔を見て、私は思わず口を覆ってしまった。
「この子……」
真っ白な顔の彼女は昼休み、私に弁当をすすめてくれたあの謎の美少女だった。
遠くに救急車の音が聞こえるまで、私は何一つ出来ず、ただ香椎くんの隣でぐったりと横たわる彼女の姿を見ていることしかできなかった。


