「一つ……聞いてもいいかしら?」
香椎くんにドツボな私を隠しつつ、お嬢様の顔でそう聞いた。
そんな私なんてきっと見抜いちゃっているんであろう香椎くんは、それでもどうぞというようにニッコリと例の笑顔で頷いた。
なんて男だろう。
きっと相当女なれしてるんだ、コイツ。
そう思うとイライラするのに、それもこれも執事であるからどんな状況でも相手でも選ぶことなく対応できるのよ!!なんて自分に言い聞かせようとする自分も自分で情けない。
ああ、ほんと。
どうしてこうも香椎くんは私の中に入っちゃってるかな?
まだ知りあってほんの数日。
数日だよ、数日。
なのにこうもあっさりと相手の思うツボなんだから、私って単純なんだわ。
って。
質問しろ、私っ!!
「学校側はこういうこともあり得るって分かってて、あなたの同伴を許可したの?」
お昼休みのあの出来事。
どこからともなく放たれた矢。
私がいたのは学校の裏の庭園で、隠れられる大きな木がたくさん植えられているうえに、校舎からは完全に死角。
あと少し、香椎くんが私を見つけるのが遅かったら……私はおそらくその矢で怪我を負っていたことは間違いない。


