背後でものっそい気配を感じ、振り返る。
なんでまた、そんなに気持ち悪いほど満面笑顔で私を見ているんでしょうか、香椎くん?
香椎くんはおもむろに私の右手を取ると、その手をそっと自分の唇近くに持っていく。
待て。
待て。
待て。
待て!!
このパターンはあのときの……って思って手を引っ込めようとしたその瞬間、すかさず彼の顔が近寄ってきて、唇に触れる寸前で止まる。
「課題は好きですか、お嬢様?」
この至近距離で何をおっしゃる執事さん?
あんた、ちょっと頭のネジ飛んでない?
「質問に答えていただけます?」
本当にギリギリのところでこの男は何を言っているんだろう?
キスをされかねない状況。
しかも公衆の面前で。
学校もすごく近いのに。
これ、ヤバくない?
すんごくヤバくない?
「答えてもらえないと、触れるのも離れるのも難しいのですけれど」
つーか、あんた、鬼だろ?


