愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~


「まさか、ボクと争う気でいるなんておっしゃりませんよね?」


岳尚様が挑戦的にそう言った。

黒ぶち眼鏡の奥の瞳がいつになく……鋭くてというのか、意地悪というのか、今まで一度も見たことのないような別人のような目をしていた。


「争う気なんかない。
もともと勝負はついているから」


お話が見えません。

っていうか、この人たちは『オシリアイ』ですか?


「ずいぶんな自信ですね。
でも、まさかこんなことをなさっておいでだとは……」


くすっと小さく岳尚様が笑い、香椎くんを上から下へと舐めるように見た。


「ま、いいですよ。
せいぜい頑張りなさい」


香椎くんの肩をポンポンと叩くと、岳尚様はスッとその横を通過する。

それから私にまた柔和なほほ笑みを向けると


「では、ごきげんよう、セリさん。
オモシロイ執事君と話せて楽しかったですよ」


そう言って、道路に待たせてあった車へと颯爽と戻っていった。

私といえば、もうなにがなんだか分からなくて……とりあえず、走り去っていく車をぼんやり見送ることしかできなかった。