「嘘だッ!! こいつはセリの執事の『香椎なんとか』だッ!!」
名前……うろ覚えなんだね。
って、ツッコみどころそこじゃないしッ!!
「あのね、マシュー……そのことなんだけど……」
私がおずおずとそこに割り込もうとしたときだった。
「おまえが一番最初に覚えた日本語って『クソッタレ』だったよなぁ」
ぽつりと香椎君がつぶやいたのは――
「で、次に覚えたのが『死んじまえ』だったなぁ」
「な……なんでそれを」
知っている……という顔を向けたマシューに香椎君はニンマリ笑顔を向けて言った。
「日本語で言えば誰にも分からず文句言えるぞ。笑って言えばなおさらだって……オレが教えたんだよな、その言葉」
って……マシューの天使の顔から紡がれる汚い言葉のオンパレード叩きこんだのって香椎君だったんかいっ!!
しかも、なんていう知恵まで授けてんのよッ!!
「ずいぶん勉強したんだなぁ、日本語。それにオレが教えてやった『花札』も頑張って勉強したんだなぁ」
よしよしと香椎君はマシューの頭を撫でる。
そんな香椎君を見上げるマシューの顔はなんだかとっても複雑そうだった。
そりゃそうよ。
すっごく慕っていた『日本の兄様』に向かって『エロオヤジ』だの『クソッタレ』だの悪態つきまくってきたんだから、心中複雑になるのも否めない。
それを分かっていて今まで散々付き合ってきた香椎君は……やっぱり超性悪?


