香椎君の言葉に唖然としているのは私だけじゃなかった。
「なんでおまえがそんなこと知ってるんだよ!? 分かったような口聞くなよッ!!おまえなんかただのエロ執事じゃねーかよっ!! そんなおまえにオレ様の何が分かるってんだよッ!!」
今にも泣きそうな顔でマシューは声を張り上げて叫んだ。
「逃げたって仕方ないだろう? もっと自由に生きたいのなら、そういう意思があるのならそう伝えればいい。自分が本当にしたいことを見つけたいのならそう言えばいい。なぜ逃げる? なぜ言わない? 本当の自分を晒すことを躊躇って逃げ回って、なんの意味がある?」
「誰が聞いてくれるってんだよッ!!オレのまわりには悪意に満ちたヤツしかいないじゃないかッ!! 本当のオレを見てくれるヤツなんて、この世のどこにいるんだよッ!! オレに媚びて、オレにへつらって。そんなヤツらしかいないじゃないかッ!!」
マシューを同じだと感じたのはこういうことだったんだと思う一方、私は納得もした。
香椎君が現れる前、私も同じことを考えていた。
家のこと。
自分のこと。
周りのこと。
全部逃げ出して後回しにして。
ずっと自分を偽って、いい子、いいお嬢様を演じてきていた。
誰も私を分かってくれないと心の中で叫んで不貞腐れていた。
きっと香椎君も同じだ。
香椎君自体、同じ悩みをずっと抱えて生きてきた人だと思うから――


