「どうして……」
呟きがマシューの口から洩れる。
「どうしてオレがエロオヤジなんかに負けるんだッ!!」
ダンダンッ!!
悔しさに滲む拳が体育館の床を強く叩いた。
その音が響き渡る。
するとすっと香椎君は静かに立ち上がり、マシューの前に進みそこで膝をついた。
「なんで負けたのか分からないのか?」
その声にマシューが顔を上げた。
香椎君を睨みつけ、顔を真っ赤にさせ怒鳴る。
「ネットでは負けたことないんだぞッ!! ずっとキングって呼ばれてたんだぞッ!! なのに……なんで……」
「だからだよ」
「な……っ!?」
「敗因はそれだ。おまえは生身の人間と向かい合ったことが一度もないから負けたんだ。それはゲームだけじゃない。おまえは家族とも向き合ってないだろう?」
その言葉にマシューが核心を突かれたかのように目を見張った。
「爵位継承の重圧? 自由がない? 誰もおまえを分かってくれない? だから逃げまわっているんだろう? 言いたいことも言わないで、黙って家を出て来たんだろう?」


