香椎君の懐からさっと5枚ほどの写真が取り出された。
まるでトランプを持つように扇形にそれらを持つと、香椎君は見せつけるようにひらひらと仰いで見せた。
写真の詳細は見えないけど……確かに私っぽいと言えば私っぽい?
ちょっとちょっとちょっと。
それ盗撮って言わないの?
「ちょッ……かしい」
「やるッ!! おまえに勝ったらそれ、全部オレ様もらえんだろうなっ!!」
香椎君に詰め寄って、その写真たちを取り上げようとした瞬間にマシューの熱い声が飛んできた。
見ればマシューは鼻の穴を広げ、息荒く、俄然やる気になっちゃっていた。
「もちろんですとも」
にっこり。
人の承諾もなく、あっさりとそんな返事をしてみせる香椎君を殴ってもいいですか?
「よしッ、じゃ3日後だ。それまでに勝負の内容は知らせるからなッ!!」
「はい、楽しみにしております」
マシューがダッシュで医務室を出ていき、私たちの横を通り過ぎて行った。
なに煽ってんだ、このバカ執事!!
という目で香椎君を見れば……
ドキンッ……!!
不覚にもちょっとときめいてしまったのだ。
マシューの姿を追いかける、なんとも哀愁に満ちたその香椎君の瞳に。
その寂しそうな表情に――


